対談 森下 功(株式会社ショーワ)×吉見チーフエンジニア(株式会社M-TEC)

 

 3月23-25日、「第45回東京モーターサイクルショー」が東京ビックサイトで開催されました。二輪公道レース「マン島TTレース」の電動バイク部門4連覇を達成した無限“神電”に関するテクニカルトークショーが株式会社M-TEC 無限ブース内で行われ、マン島TTレースでの苦労話や秘話について、当社サスペンション担当者が登壇し、トークを展開しました。

 

 

 

 

エアサスペンションならではの“特性”がある

 

森下 神電には当社のフロントフォークとリヤクッションが採用されている。それらは神電専用にセッティングをしたもので、特徴的なのは、フロントフォークにはエアサスペンションである「SFF-Air(Separate Function Front fork - Air)」が使われていること。
なぜ、神電にエアサスペンションを採用したかと言うと、3つの大きな理由がある。まず1つ目は、とにかく“軽量”であること。エアサスペンションという名前から連想ができると思うが、とにかく軽い。例えば、サスペンションに金属製のコイルスプリングが一切入っていない。今回の神電七(神電四からエアサス採用)で使用するエアサスペンションは神電参で使用していたスタンダードのフロントフォークに比べて約1.3kgの軽量化を実現している。
   
吉見 1.3kgと聞くとそうでもないのかなと思うけど、ばね下で1.3kg軽くなるということは、レーシングバイクにとってものすごいメリットがあって、マシンの性能アップに貢献している。ばね下で軽量化を実現できたことはマシン性能への影響力が大きいと感じている。

 

 

 

 

森下 2つ目は、エアを調整することによって“高い反発力”を簡単に出すことができること。
なぜ高い反発力が必要なのか。通常のサーキットでのコースと比較すると、マン島には随所にジャンピングポイントがある。私が初めて現地に行って驚いたのが、バイクが前後のタイヤを浮かせてジャンプすること。この時に高い反発力がないと、サスペンションがこれ以上縮むことができなくなる状態の底付き状態になり、非常に不安定な走行となってしまう。エアサスの高い反発力で、その問題を解消した。
   
吉見 マン島のコースは普段自動車が走っている公道のため、かなりハードなサスペンションの性能が要求される。
   
森下 3つ目は、サスペンションの“セッティングがスピーディー”に行えること。フロントフォークのトップキャップに2つエアバルブがあるので、そこでガス調整するだけ。スタンダードのサスペンションだと調整しようとすると一度分解して、部品の交換やオイル量を調整するなど手間がかかる。また、事前に計算をしておけばいくつものパターンを用意することができるので、ライダーの要求に迅速に応えることができるのもメリット。
   
吉見 実はこれも非常に助かったことの一つで、サーキットでテストするときにセッティングを何パターンも事前に用意してもらって、いろんなセッティングでテストをすることができ、結果としてスピーディーな開発に貢献してくれた。

 

 

 

 

エアサスペンションの第一印象は「最高!」

 

吉見 神電四の開発を進める中で、「フロントフォークが軽くなる!!」と初めてショーワがエアサスペンションを持ってきたけど、正直少し不安だったのを覚えている。だけど、テストで試したところライダーから「これはいいぞ!こんないいサスペンションは今まで使ったことない!」と大絶賛だった。そこから、エアサスペンションを採用しようと動き始めた。
   
森下 まずエアサスペンションを見ていただこうという軽い気持ちだったけど、テストライダーからお褒めの言葉をもらい、マン島TTレースでの採用に向けて大急ぎで調整した。すぐに会社に持ち帰り、耐久強度や性能のチェックなど何度も行って、本番まで時間がない中とにかく一生懸命対応した。

 

 

 

 

電動バイクのマシン重量は最大の悩みの種

 

森下 神電へのサスペンションを設計するにあたって一番頭を悩ませたのはマシンの重量。当時のマシンは約250kgで、Moto GPやWSBのマシンに比べて約100kg重い。さらに、走行中にジャンプすると言われたとき、普通のサスペンションを装着してはすぐに壊れてしまうと感じた。
   
吉見 マシンの性能向上とともに、どんどんスピードも上がってきて、普段考えられない荷重がジャンピングスポットでかかるようになり、サスペンションにも重くのしかかって、パーツが破損してしまうこともあった。現地で起こったことだったので、どうしようかと思ったけど、現地でパーツを造ったりするなど色々な対策を施し、何とか乗り越えることができた。その先に、実は神電参での優勝があった。
   
森下 このような事象があったと聞いて、すぐに対策に取り組んだ。その一つとして、見た目ではわかりにくいけど、リヤクッションを通常のロードレース用に比べて長いストロークとなっていて、バンプラバーはモトクロスと同じくらいの大きさのものを使用している。そのことでスピードが上がって今まで以上の荷重がかかっても問題ないように対策した。神電四から現地でのセッティングも行うようになり、チームの連覇に大きく貢献することができたと思っている。